平成5年度予算から一般会計における、防衛費の予算シーリングが事実上なくなります。これが意味するところは防衛費の極大化です。
必要とする武器装備品を気にすることなく調達できるということです。専守防衛という概念の元であれば、予算は限定的だったのだろうと思います。しかし、今後は武器装備の調達に当たり、専守防衛ではなくなり、いわゆる的基地攻撃能力が可能になるように自衛隊の戦力を変えていけるということまでも含みます。市場などは先読みし、自衛隊武器の主な製造メーカーである三菱重工業や、川崎重工などの株価は急騰していますね。
もし、我が国を攻撃しようとする蓋然性が高い外国の基地の動向次第で、先手を打って攻撃することができる自衛隊に変えていくのでしょう。仮想敵国には、中国、北朝鮮などが主に考えられますが、そういう国際情勢なのだということですね。
一方で、日本におけるいわゆるスパイ活動であるインテリジェンス能力はモサド(イスラエル)を筆頭にCIA、KGB、MI6に比較すれば、日本はカウンターインテリジェンスもろくにできていないのが、我が国の諜報能力の現状です。肝入りで設置した内閣府情報調査室、外務省、陸海空自衛隊の情報分析機関、公安調査庁等の機関はあることはあるのですが、全て、本来の予定する調査対象は、対外的な活動ができないため、諜報戦にはめっぽう弱いです。
その点、日露戦争時点での日本の諜報活動は素晴らしいものでした。帝政ロシアの崩壊を誘導したのは、日本の工作員が反政権側に情報と資金を惜しみなく提供し、見事体制を転覆し、帝政ロシアは終焉を迎えたということを司馬遼太郎先生は書き綴っておられました。太平洋戦争の際も大国英米に対して序盤有利に戦況を運べたのは、主には諜報能力に頼るところが大きかったと思います。東京都の中野区にあった中野学校(現在はただの警察学校)には、陸海空からエリート中のエリートを抜擢し、優秀な諜報部員を多数育て上げてきました。
諜報能力を引き合いに出したのは、日本は物資に頼った軍隊の増強よりも、低予算でありながら、高度な戦術活動のためのインテリジェンス養成機関や、今の散り散りバラバラに行っている諜報機関を統率する機関の設置を優先するべきだと思うのです。
法的制限があり、優位に使えない武器装備品を買うよりは余程低予算で、絶大な効果を発することができると思います。