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公益通報のはじめ方|3つの通報先と、書面に何を書くか

勤務先や取引先の違法行為に気づいたとき、どこへ、どのように伝えるか。通報先ごとに求められる要件が異なります。

勤務先で法令違反が行われている。取引先が無許可で営業している。そうした事実に気づいたとき、どこへ、どのように伝えればよいのでしょうか。公益通報者保護法は、通報した人を不利益な取扱いから守るための法律です。ただし、保護を受けるための要件は通報先ごとに異なります。この記事では、3つの通報先の違いと、書面に整理すべき内容をまとめます。

公益通報者保護法とは何か

公益通報者保護法は、事業者内部の法令違反行為を通報した労働者等が、解雇その他の不利益な取扱いを受けないようにするための法律です。通報したことを理由とする解雇は無効とされ、降格や減給などの不利益な取扱いも禁止されています。

保護の対象となるのは、労働者のほか、退職後一定期間内の者や役員も含まれます。派遣労働者や、取引先の従業員が通報する場合も対象になりえます。

また、事業者側にも体制整備の義務が課されています。一定規模以上の事業者は、内部通報に適切に対応するための窓口の設置や、担当者の指定などを行う必要があります。

3つの通報先と、それぞれの要件

公益通報の通報先は、大きく3つに分かれます。どこへ通報するかによって、保護されるために求められる要件が変わります。

1. 事業者内部(勤務先の通報窓口など)

最も基本となる通報先です。勤務先が設置している内部通報窓口や、上司・コンプライアンス部門などが該当します。この場合、通報の対象となる事実が生じている、または生じようとしていると思料することで足ります。つまり、確たる証拠がなくても、そう考える相応の理由があれば保護の対象になりえます。

まず社内で解決を図ることが期待されている、という制度の建て付けです。

2. 権限を有する行政機関

その法令違反について処分や勧告等をする権限を持つ行政機関への通報です。たとえば労働関係であれば労働基準監督署、食品衛生であれば保健所、業法違反であればその業を所管する官庁が該当します。

この場合は、内部通報より一段高い要件が求められます。通報対象事実が生じていると信ずるに足りる相当の理由があること、または、氏名等の記載を含む一定の事項を記載した書面を提出することが必要です。

「どの行政機関に権限があるか分からない」という場合もあります。その際は、権限を有する行政機関の教示を求めることができる仕組みが用意されています。

3. その他の外部(報道機関など)

報道機関や消費者団体など、被害の拡大防止に必要と認められる者への通報です。要件は最も厳しく、信ずるに足りる相当の理由に加えて、内部通報では証拠隠滅のおそれがある、通報者が特定される情報が漏れる可能性が高い、生命・身体への危害が差し迫っているなど、法律に定められた事情のいずれかに該当する必要があります。

通報書面に何を書くか

とくに行政機関への通報では、書面の内容が重要になります。整理すべき項目は次のとおりです。

  • 通報者に関する事項:氏名・住所・連絡先、通報対象となる事業者との関係(在職中か退職後か、雇用形態など)
  • 通報の対象となる事業者:名称、所在地、事業の内容
  • 通報対象事実:いつ、どこで、誰が、何をしたのか。時系列で具体的に記載します
  • 根拠:なぜその事実があると考えるのか。直接見聞きしたのか、資料によるのか
  • 手元にある資料:文書、写真、記録など。写しを添付できるものは添付します
  • 求める措置:調査、是正の指導など、どのような対応を求めるのか

ここで大切なのは、事実と、自分の評価・推測を分けて書くことです。「不正が横行している」といった評価から書き始めると、何が事実なのかが読み取りにくくなります。まず具体的な出来事を並べ、そのうえで、それが何の違反に当たると考えるのかを述べる構成が有効です。

通報にあたって注意しておきたい点

資料の持ち出しには慎重に

通報の根拠となる資料を集める際、社内の文書を無断で持ち出すと、別の問題を生じさせる可能性があります。営業秘密や個人情報を含む資料は、取扱いにとくに注意が必要です。何をどこまで手元に残すかは、慎重に判断してください。

匿名での通報

匿名での通報も可能ですが、行政機関への通報で書面による要件を満たそうとする場合は、氏名等の記載が求められます。また、匿名の場合は、調査の過程で追加の確認ができず、事実確認が進みにくいという実務上の側面もあります。

通報後の対応

通報を受けた行政機関は、必要な調査を行い、法令にもとづく措置をとることとされています。ただし、調査の実施や措置の内容は行政機関の判断によるものであり、通報したことで特定の結果が保証されるわけではありません。

告発との違い

公益通報とよく比較されるのが、刑事上の告発です。告発は、犯罪事実を捜査機関等に申告し、犯人の処罰を求めるものです。これに対し公益通報は、法令違反の是正を求めるもので、必ずしも刑事罰を前提としません。

同じ事実について、行政機関への公益通報と捜査機関への告発の両方を検討できるケースもあります。どちらが適しているかは、求める結果と、手元にある資料の性質によって変わります。

まとめ

公益通報は、通報先ごとに求められる要件が異なります。まず社内、次に行政機関、最後にその他の外部——という順で要件が厳しくなる構造を理解しておくと、進め方の見通しが立てやすくなります。

当法人では、所管官庁への公益通報に関する書面の作成、勤務先に関する内部告発の書面作成を支援しています。事実関係と資料を整理し、読み手である行政機関の視点から書面を組み立てます。詳しくは告訴状・告発状・内部告発関連のページをご覧ください。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。制度は改正されることがあり、事案の内容によって結論が異なる場合があります。実際の手続きにあたっては、所管官庁の最新の公表資料をご確認いただくか、個別にご相談ください。
※ 行政書士は、官公署に提出する書類等の作成、提出手続の代理、相談を業務としています。訴訟代理・法律相談・登記申請・税務申告など、他の士業の独占業務は取り扱っておりません。

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