遺産分割協議書の作り方|必要な記載事項と進め方の順序
相続手続きは「何から始めるか」で進み方が変わります。遺産分割協議書にたどり着くまでの順序と、書面に落とし込む際の要点を整理します。
「相続の手続きを始めたいが、何から手をつければよいか分からない」——最も多くいただくご相談のひとつです。相続手続きは、順序を間違えるとやり直しが発生します。この記事では、遺産分割協議書を作成するまでの流れと、書面に記載すべき事項を整理します。
まず確認するのは「遺言書の有無」
最初に確認すべきは、遺言書があるかどうかです。有効な遺言書があれば、原則としてその内容にしたがって遺産を分けることになり、遺産分割協議は不要になる場合があります。
遺言書には主に次の種類があります。
- 自筆証書遺言:本人が自筆で作成したもの。法務局の保管制度を利用していない場合、家庭裁判所での検認が必要です
- 公正証書遺言:公証人が関与して作成したもの。検認は不要です
- 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま存在を証明する方式。検認が必要です
自筆証書遺言を見つけたとき、封を開けずに家庭裁判所へ持ち込む点に注意してください。封印のある遺言書を勝手に開封することは認められていません。公正証書遺言の有無は、公証役場の検索システムで確認できます。
相続人を確定する
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。一人でも欠けていれば、その協議は無効です。そのため、誰が相続人なのかを客観的な資料で確定する作業が必要になります。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を収集します。本籍地が複数回移っている場合、それぞれの市区町村から取り寄せることになり、時間がかかります。
この調査の過程で、家族が把握していなかった相続人が判明することがあります。前婚の子、認知された子などが典型です。だからこそ、「分かっているつもり」で進めず、戸籍で確認する手順が欠かせません。
法定相続情報一覧図という選択肢
収集した戸籍をもとに、法務局で法定相続情報一覧図の交付を受けられます。相続関係を一覧にした証明書で、その後の金融機関や各種手続きで戸籍の束の代わりに使えます。手続き先が複数ある場合、大幅に手間が減ります。
相続財産を調査する
次に、どのような財産があるかを確認します。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(債務)も対象です。
- 不動産:固定資産税の納税通知書、名寄帳、登記事項証明書
- 預貯金:通帳、金融機関への残高証明書の請求
- 有価証券:証券会社の取引報告書
- 債務:借入の契約書、請求書、信用情報機関への照会
- その他:自動車、貴金属、保険、ゴルフ会員権など
調査結果は、遺産目録としてまとめます。協議の前提となる資料であり、後の協議書作成の土台にもなります。
期限がある手続きに注意
相続には期限のある手続きがあります。とくに次の2つは、財産調査と並行して意識しておく必要があります。
- 相続放棄・限定承認:原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。債務が多い可能性がある場合は、早期の判断が必要です
- 相続税の申告:相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です
また、相続登記は義務化されており、不動産を取得したことを知った日から一定期間内に申請する必要があります。登記申請そのものは司法書士の業務範囲です。
遺産分割協議書に記載する事項
相続人と財産が確定したら、協議を行い、その結果を書面にまとめます。記載すべき主な事項は次のとおりです。
1. 被相続人の特定
氏名、死亡年月日、最後の本籍、最後の住所を記載します。同姓同名の人物と区別できるようにするためです。
2. 相続人全員が協議した旨
相続人全員で協議し、合意に至ったことを明記します。
3. 財産ごとの取得者
ここが最も重要な部分です。どの財産を、誰が取得するのかを、財産を特定できる形で記載します。
- 不動産:登記事項証明書の記載どおりに、所在・地番・地目・地積(建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積)を書き写します。住居表示ではなく登記上の表示を用います
- 預貯金:金融機関名、支店名、預金の種別、口座番号を記載します
- 有価証券:証券会社名、銘柄、株数などを記載します
記載が不正確だと、金融機関や法務局で手続きが進まず、作り直しになります。とくに不動産は、私道部分の持分など見落としやすい財産があるため、名寄帳で確認しておくと安全です。
4. 後から判明した財産の取扱い
協議後に新たな財産が見つかることがあります。そのため、「本協議書に記載のない財産が判明した場合は、〇〇が取得する」または「別途協議する」といった条項を入れておくのが一般的です。
5. 署名押印
相続人全員が署名し、実印を押します。あわせて全員の印鑑証明書を添付します。金融機関や法務局での手続きで求められるためです。
複数枚になる場合は、ページのつなぎ目に契印を押します。相続人が遠方にいる場合は、同一内容の書面を人数分作成し、各自が署名押印する方法もとられます。
進め方のまとめ
- 遺言書の有無を確認する
- 戸籍を集めて相続人を確定する
- 財産と債務を調査し、遺産目録にまとめる
- 相続人全員で協議する
- 結果を遺産分割協議書にまとめ、全員が署名・実印を押す
- 金融機関の手続き、相続登記、相続税の申告へ進む
当法人では、相続人の調査(戸籍謄本・除籍謄本の取得)、相続財産の調査、遺産目録の作成、遺産分割協議書の作成を支援しています。遺言書の作成についてもご相談を承ります。
なお、相続人の間で意見がまとまらず争いになっている場合は、弁護士の業務範囲となります。また、相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士の業務です。当法人では、必要に応じて連携先をご案内します。詳しくは個人向けの取扱業務をご覧ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。制度は改正されることがあり、事案の内容によって結論が異なる場合があります。実際の手続きにあたっては、所管官庁の最新の公表資料をご確認いただくか、個別にご相談ください。
※ 行政書士は、官公署に提出する書類等の作成、提出手続の代理、相談を業務としています。訴訟代理・法律相談・登記申請・税務申告など、他の士業の独占業務は取り扱っておりません。
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